音楽をめぐる冒険。 #003 塚本浩哉/Anothe Great Day to Be Alive

 

くるり電波で岸田繁さんが紹介していた塚本浩哉さん。アメリカ在住のギタリスト。

アルバム"Places"は、朝聞いてよし、昼聞いてよし、夜聞いてよし。心が休まる。

荒涼とした大地、連なる山々、波立つ海原と、心に浮かぶ情景は自然、あるいは地球。広々として、穏やか。あたたかで、鮮やか。

ギターの音色が優しく綺麗に響きます。

音楽をめぐる冒険。 #002 Fruit Bats/Tony The Tripper

 

「ここではないどこか」って言葉、自分にはしっくりこない言葉だったけれど、この曲を聞いて心に浮かんだ風景が、「ここではないどこか」だなって感じられた一曲。(うまく言葉にできなくてもどかしい)

アルバム「Tripper」の一曲目。よく通るギターサウンドと、軽やかなメロディーと、ハイトーンのボーカルが空まで突き抜けていく。ジャケットの草原も美しい。アルバム全体を通して旅や冒険や自然を想起させてくれる、聞いていると心が軽くなって何処かへ飛んでいきそう。そんな一枚。

ジャケ買いをした「冒険」のアルバムでもあったので、「音楽をめぐる冒険」に相応しい一曲かなと思います。

音楽をめぐる冒険。 #001 Vetiver/Wonder Why

 

どこかのお店で、有線で流れていたこの曲が気になってsound hound(鼻歌とか流れている音楽から情報を検索するサービス)で検索をかけたことで出会ったvetiver。iTunesで速攻アルバムErrant Charmを購入した。

ギターの音と優しいメロディが気持ちいい。歌詞は「この世界はどうやったら僕を認めてくれる?」って、その悩みわかるなぁ。とますますこの曲のことが好きになった。誰にも認められないような、苦しい気持ちになった時、この曲の優しさは救いになるんじゃないかな。

 

書評入門。 #002 ファントム/スーザン・ケイ


f:id:unouk:20180116195943j:image

1991年出版。ガストン・ルルーの「オペラ座の怪人」に登場するファントム、エリックの生涯を様々な人物の視点から描いた群像小説。

この本を読んでいる間、別世界へいたように感じました。エリックの生涯を本人の視点や母親、友人の視点から追っていくこの作品は、一人称視点で描き続けるよりもより鮮明にエリックという人物を浮かび上がらせています。

天賦の才を持ちながらその悍ましい風貌から人々に忌み嫌われ、母の愛すら受けられず、自らも人を愛する術を知らない怪人に、なぜか同情のような、憐れみのような、しかし尊敬の念を覚えながら、という複雑な感情を抱きます。

音楽、建築、科学、人々を巧みに操るその美声、悪魔のような人心掌握術を兼ね備えたこの天才はまさしく怪人と呼ぶにふさわしい。好奇心から彼のマスクを剥ごうとしその素顔を見ては恐れおののく愚かな人々に対する憎悪と、動物や子どもなどのか弱き存在への慈愛の精神を兼ね備えた彼の複雑な人間性も「ああひょっとするとこんな人間がいてもおかしくないかもしれない」という、非現実的ゆえにリアリティを感じるというこれもまた形容しがたい気持ちもしました。

訳文は明快で、違和感や読みづらさを感じさせません。また筆者の背景知識も非常に豊富で、オペラ座建築の軌跡をしっかりと辿り、当時のフランス文化への興味も湧かせます。

「死にもいろいろあることを覚えておいてほしいだけだ。死の中には、見ていられないほどつらく苦痛に満ちたものもあれば、日が沈むように穏やかで美しいものもある。私は芸術家だ。私のパレットには色とりどりの絵の具がある。あの子を虹色に染めさせてくれないか。そして、それを消す手伝いも…」

生と死、芸術、親子の愛と友情と、テーマは盛り沢山なのですが、そのどれも中途半端にならずくっきりとした輪郭線を帯びて、心に残ります。

思いっきり小説世界へ浸りたいときに、ゆっくりじっくりと読書を楽しみたいときに手にしてみてください。

書評入門。 #001 わたしを離さないで/カズオ・イシグロ


f:id:unouk:20180116200032j:image

 

最初の一冊はこれで書きたかった、ので再読してました。

「わたしを離さないで」、前作「日の名残り」でブッカー賞を受賞したカズオ・イシグロによる2005年の著作。映画化、舞台化もされました。

この本を読むきっかけは、とある読書好きな大事な友人に勧められたこと。読書は、ただ物語を楽しむだけでなくその本にまつわるエピソードや思い出も含めて楽しむことができるものだということを初めて体感した一冊として、現時点での人生史上最高の一冊です。

介護人として働くキャシーの語りを主として話は進みます。ヘールシャムという施設で過ごした友人、ルースやトミーとの日々が綴られ、彼女のこれまでの人生を振り返るという構成です。冒頭から「提供」といった、単語としては理解できるがこの物語の世界においてどんな意味を持つかがわからない言葉が出てきます。そしてそれらの「わかるけどわからない言葉」が持つ意味が明かされる時に、一気にこのカズオ・イシグロの描く世界へと引き込まれていきました。

カズオ・イシグロの文体を表す時、「静謐」、あるいは「抑制」という表現がよく使われますがこの一冊はまさしく極限まで抑制のきいた文体によって、精緻に作品世界が描かれています。しかしその作品世界が孕む理不尽さ、毒々しさは強烈です。それを感じさせない理性的で落ち着いた文体とのギャップは、他の作家では真似できないものがあり、この作品の最大の魅力でもあります。

また、キャシーが記憶をたどりながら読者に語りかけるという構成も、侘びしさ、懐かしさ、郷愁、過去を振り返るという行為によって心にもたらされる感情を、読者にも感じさせます。

「記憶」は「日の名残り」でも示されたようにイシグロ作品において重要な要素です。誰しもが抱え、ときに振り返る記憶を鍵として、読者に共感をもたらす。

この一冊によって、僕の読書人生は大転換しました。それまで読んだどんな本より心に強く刻まれました。それだけ大きな意味を持つ一冊についての書評をついに書くことができて僕は満足です(笑)

文庫化もされています。この書評がイシグロ作品の世界へ皆さんが足を踏み入れるきっかけとなれば、いちファンとして至上の喜びです。

決別/決意表明

以前noteに書いた記事を引っ越してます。




これから、書評を書きます。

読書が大好きです。子どもの頃から図書館へ通ってはいろんな本を借りました。

今まで読んだ数多の本から、様々なことを感じ取ってきたはずなのにふと思い返せば、頭の中にはほとんど何も残っていない。

物語の筋を覚えていればいい方。なんてもったいないんだ。どんなに素晴らしい本に出会っても無感想に終わることのもったいなさ。

なので、書評書きます。アウトプットなくしてインプットなし。漫然と本を読む日々との決別です。

感想や心に残った一文を綴り、自分がどんなことに心動かされるのかも探りながら、より良い読書体験をしたいと思います。

先輩のやさしさ

会社に、自宅の近所に住んでいる先輩がいる。

徒歩10分圏内。全くの偶然なのだけど、入社初日に判明してえらく驚いた。会社は家から遠いしまさかお近くの方がいるとは思わなかった。

その先輩は車通勤なので、電車通勤の僕を帰り時間が合えば家まで送ってくださる。大変にありがたい。

電車が来るまでの時間に加えて乗り換え待ちとか電車通勤はなんだかんだ一時間半かかるのだけど、先輩が送ってくださると40分でついてしまう。

後輩がどこまで先輩に甘えていいんだろうか。先輩が「送っていこうか?」とお申し出くださればお言葉に甘えて〜ができるが自分から乗せていってくださいというのは図々しい。

会社の愚痴話やプライベートの話で楽しく話しながら帰ってこれるというのもあって図々しくお願いしてしまう自分を先輩はどう思っているんだろう…